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[2010年12月21日] 
小さな絵の物語1〜5     絵と文、桑原健一
夢のつづき 1 黒い月

赤い翼を持つ鳥獣と旅を続けるケンはまだ十分に空を飛べない 小さな岡を歩いて越えると向かいの空に黒い月が出て不気味、殺気も感じる ケンは下り坂を選んで手を広げる 以前より手が広がってきて裏の皮膚も伸びるようになってきた 助走をつけると落ちたときに痛いので立ったまま手を動かすとしばらくすると2m浮いた そこで後ろの足を後ろに持ち上げれば上昇するのだが、お尻だけが持ち上がった状態なので飛ばない 前進するためには手を激しく振るしか手がない 坂道を利用するのは気持ちの問題で、どこまで行っても高度は路上2mのままなので、人通りの多い場所では十分使えない 腹筋や背筋などの力も飛ぶにはまだ十分でないようだ
 子供の頃は自宅の2階の窓につかまって体を外に出し足を水平に上げる浮く練習を妹と毎日した 下半身は推進力だと父から聞かされた記憶がある 窓から宙に浮いたまま出入りはできるが、ツカマリ飛び 手は何かを持っている状態 つづく、、、
  




 
夢のつづき 2 放牧場

坂道をゆっくり飛んで下って進むとやがて目の前に青い霧が立ち込めている 空には黒い月が出ている、青い霧を手をバタツカセ霧を退けると宙に浮いた果物のような物体が現れた 甘い香りを放ち、ゆっくり近づいてきた
ラグビーボールぐらいの大きさで10個ぐらいが浮遊してクチュクチュ音がして回ってくる 突然ピンク色に割れ目が開き牙をムイテ襲って来た ケンは必死で飛んで逃げた 幸い坂をのぼると追って来なかった、フーフー言いながら休んでいると鳥獣のハヤテが舞い降りてきた
 ハヤテの話しではピンクボールと言う肉食動物でグリーンボールと呼ばれる草食系が存在すると言う、昔は家畜として飼われていたが進化して凶暴になった、10匹前後の群れで活動、暗くても育つ、肉は美味らしい丸焼きにして食べていたと言う。ダッチオーブン14インチで焼く場合は小ぶりのピンクボールを予め予約しておくといい
 ハヤテに撃退を頼んだがピンクボールはワニやサメ以上の歯を持っている、足の指でも咬まれるとイヤだとう、そして今は子育ての季節で動きが早く、青い霧の中には沢山いてあっという間にピラニア状態とオドス。しかし弱点もあり家畜としてのDNAで暗く狭い環境でも育つように光に弱く、2m以上は空中には飛べないと言い残しハヤテは立ち去った 2m以上飛べないと言う欠点には共感するが、ケンはサバをよんでいる可能性が高く、簡単に飛んで進めない
 
夢のつづき 3 暗闇の中

青い霧の中で暮らすピンクボールは群れで獲物を狙う、しかし2m高さまでの空中での生活のなかで上下の位置で排便した場合、下のピンクボールに汚物が付く これでは喧嘩になって集団生活は成立しない ルールがあって地上に近いものから出すのだろうか、気になって仕方がないのでソット近づき観察、するとオシッコが出るなり水滴となってナント浮遊した、また出たウンコも落ちない飛んだ そして浮遊しながらウンコとシッコが融合したり分裂を繰り返している、スゴイ、しかし このままではイズレ、そのカタマリが来る予感がする すぐに脱出しなければならない
 しかしケンの空を飛ぶ実力は1歳児程度のツカマリ飛びとツタイ飛びだけ、近くにあった高さ50mの大きなイチョウの木のそばで両手をバタツカセ2mほど飛んでソット木につかまろうとすると落ちた まだ腕だけで飛んでいるのだ、今度はうつ伏せになって足でイチョウの幹を挟み両手を広げバタバタ動かすと浮いてきてスルスル登った 枝や葉っぱの部分は足を絡ませて何とか天辺まで着いた、くるぶしでイチョウの穂先を固定して両手を広げてゆっくり風を受け背筋を伸ばすと沈没の豪華客船の映画のシーンのようでしばし遠くを見つめてワレヲ忘れた、、、 下を見ると闇の底に人間がうごめいているように見えて怖い 
 
夢のつづき 4 飛び方

高いイチョウの木の上で一連の儀式を終え 飛び立つことになった ケンにとっては幸いなことに目の前にはイチョウ並木が続いている、次のイチョウまで150mほど、落ちれば餌食となるだけ 鳥獣ハヤテがケンを見つけて舞い降り、広げた手首を柔軟に指先の腹で風を感じながら押し出せとアドバイス 付け加えケンは頭が重いのでバランスの問題で首をチジメルなどの工夫も必要と言うが、首はこれ以上短くはならない、ケンはバトミントンの羽根は頭が重いが、打てば飛ぶと言って思い立ったようにイチョウの木の穂先を猿のように全身で揺らして、その反動で次の瞬間空中に飛び出した、その瞬間に黄色に色づいたイチョウの葉っぱも一斉に宙に舞い上がった、飛び立ったケンに渦のような黄色の飛行雲が何層も形成され、そのイチョウの黄色トルネードはゴーっと音まで出し始めたのだった それはケンという少年が只者でない証 
 
夢のつづき 5 赤い門

イチョウの木のテッペンから飛び出したケンは両手を広げ足を真っ直ぐ伸ばし次のイチョウの木を目指した 後ろからキューンと言う音とともにイチョウの葉っぱのトルネードがケンを包み込む なんという感覚だろう、後ろから押されているドンドンスピードが増しているのが肌でわかる、このままだと目標をオーバーしてしまうと感じて、両足をムササビのように広げて次のイチョウに向かった イチョウの一番枝の張った部分を目指すため右手で抵抗を作り右足で降下の姿勢をとった、8時5分の体位で無事イチョウに着。トルネードは次のイチョウの葉も巻き込み、キューンという音からゴーウォーンと吹きぬけた、闇の彼方へ黄色の渦が暗黒を破った 突然そこには赤い門のある城壁が現れた
 ケンは呆然とイチョウの木の上で眺めていると手に痛みを感じ、ワレニ返るとピンクボールの子が噛み付いているではないか、イチョウの木は彼らの巣だったのである トルネードが過ぎたイチョウを良く見ると何十本も全て巣、子供がびっしり、時々赤い口をあけて餌を求めている 子供に危険を感じたピンクボールの親はゾロゾロ木によじ登ってきている ケンはつかまり飛びで足を投げ出し枝をつかんでイチョウの先端を目指した しかし上ほど密集していて進めない、親は凶暴化して迫ってくるピンチ ついにケンはつかまっていた手を枝から離してしまった
 
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